2人の人生を変えたインターンシップ

1人のインターンが、上司との接し方と仕事観をどう変えたのか。

カロリーナ・トロヤ・サパタが少年院から出所したばかりのインターンのメンターを引き受けたとき、彼女とチームはその若者にチャンスを与えたいという思いでいっぱいでした。それがどれほど困難で、どれほど大きな変化をもたらすものになるかを、まったく予想していませんでした。
カロリーナ・トロヤ・サパタが少年院に収容された経緯があるインターンの採用を打診されたとき、彼女とカミンズ(コマツカミンズのグループ企業)は、彼を温かく迎え入れました。

数年経った今でも、アンドレス・アレハンドロ・レアル・ロヨラは同社に在籍し、良き友人関係が続いています。
アンドレス・アレハンドロ・レアル・ロヨラは、Reinventarse Foundation (リインベンタルス財団:以下、財団と記載)の支援を受けていました。この革新的なプログラムは、コマツカミンズチリ(以下、コマツカミンズ) の非営利部門が提供するものであり、少年院にいる間から実施され、収容期間を終えた後も社会復帰に向けた支援を行っています。

トロヤとチームは、財団の重要な使命の一部を担っていました。それは実際の仕事とその対価である給与の支払いです。レアルのように過去に法を犯した若者にとって、以前では考えられなかったことでした。

「とても意義深い経験だった」とトロヤは語っています。「結果として、私たちは彼のインターン期間中、共に走り抜けることになった。彼と働き、学び、成長を見守り、彼のつらい時期を支えたことで、私の人生観は大きく変わった」。

突然の依頼

エクアドル出身のトロヤは、経営学を学び、マーケティング分野で彼女のキャリアをスタートさせ、シーメンスで戦略コンサルタントとしての仕事に就きました。この経験から、その後チリに渡りMBAを取得しました。2012年にコマツカミンズに入社し、管理・財務部門でマネージャーを歴任しました。現在は、グループ会社であるカミンズにおいて、戦略・管理部門のマネージャーを務めています。

入社して間もない頃、上司の1人から、企業の社会的責任 (CSR) やダイバーシティ&インクルージョンの業務を担当するように言われました。「私は『え?そんな経験はありません』と断った。でも『いやいや、この会社でリーダーになりたいのならば、これもあなたの仕事です』と言われた」。

その後まもなく、少年院で服役中に財団の訓練プログラムを受けたレアルをインターンとしてチームに受け入れて欲しいと打診されました。彼は訓練プログラムのなかで、技術的なスキルを学び、職場で必要とされるソフトスキルも学んでいました。19歳のレアルは、新しい生活に慣れようと努力していました。財団のインターンシップ制度に応募する際、技術職ではなく事務職を希望しました。

これがトロヤと財団の初めての接点で、この時はその後も財団と関わることになるとは予想していませんでした。

課題、解決策、そして得られた教訓

その後の数か月間、トロヤのチームとレアルには多くの課題が生じました。チームは、自分たちとは全く異なる人生を歩んできた人物と働くことに戸惑い、レアルはこれまで接点のなかった社会に順応していくことに奮闘していました。

その後、チームは他のインターンと接するなかで、厳しい環境で育ち、今もそこに暮らしている若者たちに共通する問題があることに気付きました。なかには、週5日働くことや、帰属意識を持つことなど、一見簡単そうな課題もあれば、薬物の再使用、刺傷事件で入院した親族、ギャングの襲撃から身を守るためにバリケードを作り自宅を囲むことなど、より深刻な課題もありました。

こうした問題が起きたときには、財団の専門スタッフが介入し、サポートしました。また、チームがレアルの話す力と書く力にギャップがあることに気付いたときには、職業スキルに関するサポートも行いました。財団スタッフが原因を分析し、改善に向けた支援を行いました。「財団の専門スタッフが、愛と希望を持って、困難な状況にある人々をサポートする姿を見るのは、本当に感動的だった」。

インターンたちをより深く理解するうちに、トロヤの信念や価値観に大きな変化が起きました。「若者の非行を責めたり、批判したりするのは簡単だ。しかし、彼らの人生を知り、つながりを築いたことで、私自身が大きく変わった」。彼女が接してきたすべてのインターンが、「社会への理解を深めるきっかけを与えてくれた。また、一人の人生を変える一翼を担うことは、その人の家族や友人など周囲の関係者も含め影響を与えるということに気付いた」。

レアルのインターン終了後、トロヤは彼を事務職として配属しました。彼はそれを受け入れ、昇進を重ね、その後社内でさまざまな職務を経験しました。初めてトロヤに出会ってから10年経った今も、レアルはコマツカミンズに在籍し、製品サポートグループでプランニング・アナリストとして活躍しています。トロヤは今も彼と親しく連絡を取り合っています。

「私たちが彼に教えたのは、人生を大きく変える経験だった。彼から学んだことは、彼の置かれている状況を理解することだった」。


取り組みは今も継続

「経験がありません」というトロヤの発言から始まったこの取り組みは、今では彼女にとってかけがえのない経験になりました。彼女は、チリにあるコマツカミンズのグループ企業であるディストリビューター・カミンズで、CSR活動を統括し、ダイバーシティ&インクルージョン評議会のリーダーも担っています。彼女とチームは、女性矯正施設へコールセンターの設置や、少年院での部品修理ワークショップの立ち上げなど、財団の新しい取り組みをサポートしてきました。

その過程で、コマツカミンズ社内の多くの人々からトップダウンのサポートと協力を受けてきました。

これこそが、コマツカミンズで働く大きな魅力の1つだと彼女は言います。「ここでは、チリ文化、コマツ文化、カミンズ文化という3つの文化を一度に体験できる。これら3つの融合は、個人の成長にも、キャリア形成にも、かけがえのないものである」。

財団を通じて少年院から就職への道筋をつくることは、企業にも地域社会にも恩恵をもたらします。「『私たちの価値観を生きる』という言葉が、ここでは本当に実感できる。価値観とビジネス目標に合致するアイデアは、いつでも受け入れてもらえる。それは私にとって、素晴らしい贈り物だ」。

左から、カロリーナ・トロヤ・サパタ、
アンドレス・アレハンドロ・レアル・ロヨラ、
マティアス・ロドリゲス・ペンロス。

彼らは同僚として出会い、今も友人関係が続いています。ロドリゲスはカロリーナのチームメンバーで、レアルがインターンとして入社した当初から彼を支える重要な役目を果たしました。

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