社会と向き合い、未来を動かす:コマツの電動化

  
2026.4.27
イノベーション

社会と向き合い、未来を動かす:コマツの電動化

 

コマツのエンジニアは、重工業分野における排出量削減と効率向上を目指し、電動化を着実に進めています。ハイブリッドシステムやバッテリー車から水素エンジン車まで、性能・コスト・持続可能性のバランスを重視した実用的なソリューションを開発しています。
お客さまが環境負荷の少ない未来へと歩みを進めていく過程を、確かな技術で支えています。

 


責任ある未来を支えるエンジニアたち

小保田麻暉にとって、子どものころの日本の夏は、暑さを気にすることなく一日中外で遊んでいられる季節でした。しかし、時代とともに夏の姿は変わりました。「子どもの頃は、夏に外で遊ぶことが当たり前でした。でも今では、外に出ること自体が危険な暑さになることもあります」と小保田は語ります。

小保田にとって変わったのは、気温だけではありません。“責任”の意味そのものが変わったのです。
「子どもたちの将来を考えたとき、次の世代のために、今できることをやらなければならない。そう強く感じるようになりました」

その想いこそが、コマツでハイブリッド油圧ショベルの設計者として働く彼の原動力です。彼が改良に携わるすべての技術は、ひとつの問いへとつながっていきます。
「世界を創り上げてきた機械は、世界を守る役割も果たせるのだろうか」

コマツ全体で、エンジニア一人ひとりが、それぞれの立場から同じ問いに向き合っています。
ハイブリッドシステム、バッテリー車、水素エンジン車──アプローチは異なっても、その根底にある想いは同じです。
人々が日々頼りにする機械は、進歩を生み出すだけでなく、環境への影響を抑える存在であるべきです。
この信念は、課題の捉え方から技術開発の進め方、そして成功の定義まであらゆる判断の軸となっています。

課題解決に向き合ってきたこれまでの歩み

機械で社会課題を解決するという考え方は、コマツに深く根づいています。電動化が世界的な優先事項になる遙か前から、後にコマツグループの一員となるLeTourneau社、Joy社、P&H社のエンジニアたちは、鉱山機械における電気駆動システムの研究を進めてきました。

電動ロープショベルやハイブリッドシステムを搭載した機械は高い生産性と効率性を確保しつつ、排出量の削減が可能であることを実証しました。
これらの企業がコマツグループに加わったことで、専門知識は融合され、好奇心と粘り強さ、そして“技術で産業をより安全で持続可能なものにする”という共通の価値観に根ざしたエンジニアリング文化が育まれてきました。

「コマツには電動化の分野で他に類を見ない歴史があります」そう語るのは、コマツ・ノースアメリカのCEO、ロッド・ブルです。
「産業を越え、技術を越え、世代を越えて続いてきた物語。それらをつなぎ合わせることで、コマツのチームが数十年にわたり積み重ねてきた取り組みの全体像が見えてきます」

その蓄積が、今、性能、コスト、環境配慮というすべてを同時に満たすことが求められる転換期において、お客さまを支える原動力となっています。

次世代の動力ソリューションをかたちにする

コマツのエレクトリフィケーション・センター・オブ・エクセレンスでは、エンジニアたちが次世代の機械のテストを行い、コマツの歴史の中で培われてきた知見を結集しながら、業界のニーズや環境への期待の変化に対応する柔軟な動力ソリューションを開発しています。

専門性を結集し、次の時代を切り拓く

これまでに培ってきた基盤を土台に、コマツはグローバルな事業全体から専門性を結集し、これから訪れる次のフェーズに取り組んでいます。
「P&H社、Joy社、LeTourneau社から、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ専門家を集結させました。」とエンジニアリング部門シニアディレクターを務めるマーク・バーは語ります。

彼らが取り組んでいるのは、「現代社会を築き、支えてきた機械を、環境負荷を抑えながらどう動かしていくか」という、重工業にとって最大級の課題です。
そして、その答えは、ひとつの技術に限定されるものではありません。
ディーゼル・エレクトリックシステム[MK2.1][MK2.2]から、ハイブリッドシステム、バッテリー車、さらには水素エンジン車まで。
重要なのは、実用的で、特定の動力源にとらわれない柔軟なアプローチです。

「自分たちの可能性をひとつに限定するつもりはありません」とバーは言います。
「代替燃料もあれば、新たな動力源もある。明日、どんな技術が現れるかは、誰にもまだ分かりません」
その考え方は、確かな基盤を土台としながら、より柔軟で環境に配慮した未来を自ら切り拓いていこうとする、大きな意識の変化を表しています。

動きを、未来への力に変える

小保田にとって、電動油圧ショベルはその未来への確かな一歩です。
旋回減速時に生じるエネルギーを回収し、電力として再利用することで、燃料消費を抑えながら効率を高める。その仕組みは非常に洗練されています。
しかし、彼が見据えているのは技術的な成果だけではありません。

その先に広がる可能性——排出を減らし、現場の効率を高め、持続可能な社会へ貢献することです。
「これらは、カーボンニュートラルへの道をつなぐ製品です」と彼は語ります。

仕事は決して簡単ではありません。それでも彼を動かし続けるのは、極めて個人的な想いです。
「子どもたちや将来世代のことを考えると、今できることはすべてやりたいと思うのです」

地下環境の改善に向けて

電動化はすでに、地下採掘の現場における働き方を変えつつあります。そこでは長年、熱、排出ガス、換気が日常的な作業環境を左右してきました。ハードロック鉱山向けバッテリー電動技術のディレクターを務めるブラッド・ジマーマンの課題は地表のはるか下にあります。

彼がこの分野にたどり着くまでの道のりは、決して一般的なものではありませんでした。独学で技術を磨き、かつて電動スポーツカーの試作開発に携わっていました。そこで育まれた好奇心が、やがて建設・鉱山機械の分野へと向けられていったのです。

地下採掘の現場では、排出ガスや熱が長年にわたり作業環境に大きな影響を与えてきました。現在、彼が取り組んでいるのは、こうした地下採掘特有の根深い課題です。作業員の安全を守るために稼働し続ける換気システムは、大規模で高コスト。運用面でも大きな負担となっています。電動化は、そこにまったく新しい選択肢をもたらします。

坑内で広がる電動化の取り組み

ブラッド・ジマーマンは、鉱山の現場のお客さまと行うデモンストレーションに向けて機械の準備を行っています。実機によるテストと現場での率直な意見交換を通じて、排出ガスを抑え、坑内の発熱を低減し、作業環境の改善につながる電動化ソリューションの最適化が進められていきます。

電動化を、現場での確かな成果へ

地下採掘の現場では、電動化によって作業環境の改善やオペレーション効率の向上といった、目に見える効果が出ています。

電動化には二つの効果があります」とジマーマンは言います。
「ひとつは、作業員が排気ガスにさらされずに働けるようになること。もうひとつは、コストを大幅に削減できることです」

地下の現場では、この変化が日々の働き方そのものを変えていきます。熱や排出物の削減は、単なる効率向上にとどまらず、より安全で快適、そして人にやさしい作業空間を生み出します。

「一見すると矛盾しているように思えますが、機械を電動化すると、電力を節約できるのです」

これらの成果は、電動化が長年の課題に対応できるだけでなく、現場で働く人々にとって、より安全で持続可能な作業環境づくりにつながることを示しています。

未来を見据え、慎重に形にする

コマツのエンジニアの中には、さらにその先の可能性を見据えている人もいます。シニアエンジニアの中川恒大もその一人です。
中川は、コマツ初の水素エンジン車の試作開発に携わり、水素技術による建機の未来を探ってきました。

小保田と同じく、彼がこの仕事に向き合う理由も、自身の想いに根ざしています。「子どもたちの将来を思うと、今できることに全力で取り組みたいと思います」
燃料電池車は、建機にとって大きな可能性を秘めた選択肢です。
短時間での燃料補給が期待できるほか、稼働性能をディーゼル機と同等を保ちながら、排出量を大幅に削減できる可能性があります。
一方で、熱管理や耐久性、インフラ整備、水素供給など、課題も残されています。しかし、中川や一緒に働く仲間たちにとって、そうした課題こそがエンジニアリングの本質です。
挑戦する価値のあるテーマなのです。

次をかたちづくるエンジニアたち

岡本貴樹、中川恒大、小保田麻暉は、日本に拠点を置くコマツのエンジニアリングチームの一員として、次世代の電動化機械やエネルギーソリューションの開発に携わり、業界全体での、より効率的で低排出なオペレーションの実現に貢献しています。

学びを育む文化

コマツの電動化チームにおいて、イノベーションへの道筋は一直線ではありません。試作機の製作や、パイロット導入、現場でのデモンストレーションを通じて、エンジニアたちは素早く試し、うまくいったことと、うまくいかなかったことも、すべてを学びとして積み重ねていきます。そのプロセスは、試行錯誤を着実な前進へとつなげる役割を果たしています。

「日本には『失敗は成功のもと』ということわざがあります」そう語るのは、バッテリー車の開発や次世代技術の研究に携わる車両開発技術者の岡本貴樹です。

「どんなに小さな失敗でも、そこから得られる学びは大きい」「バッテリー車を開発していたとき、部品を一つ間違えて手配しただけでも、その経験は強く記憶に残ります。同じ失敗を繰り返さないという意識が、結果的に開発のスピードを高めてくれるのです」

こうした学びは、チームを越え、世代を超えて共有され積み重なっていきます。
脱炭素・電動化グループでバッテリーシステムのシニア・プロダクトマネージャーを務めるフィル・ローゼンスタンは、そのプロセスをより率直な言葉で表現します。

「大切なのは、とにかく早く失敗することだ」それは、現場でアイデアを素早く試し、失敗から学び、製品がお客さまのもとに届く前にシステムを磨き上げるという意味です。ローゼンスタンの仕事は、エンジニアリングの知見、新たな技術、そして現場のリアルな課題が交わる最前線にあります。

価値観が導くイノベーション

エンジニアたちが技術開発に取り組む一方で、それを支える仕組みに注力する人たちもいます。
コマツ・ノースアメリカで事業開発担当シニアディレクターを務めるマイク・ルイスは、充電ネットワークや自動接続コネクター、動的なエネルギー供給システムまで、インフラとエネルギーのソリューションに携わっています。

ルイスにとって、電動化は一度きりのブレークスルーではありません。長い時間をかけて積み上げていく、継続的な取り組みです。
「これはスイッチを切り替えるような話ではありません。一歩一歩、時間をかけて進めていく必要があります」
25年以上コマツに在籍するルイスは、子どもの頃から環境保護の意識を持って生きてきました。その価値観は、仕事への向き合い方にも色濃く反映されています。

「この20年、環境に良いと言われることを行うことは、ビジネスにとっても正しい選択だと強く信じてきました」と彼は話します。 
「コマツにとってメリットがあることは、お客さまにとってもメリットがあり、社会にとってもメリットがあるのです」

技術と現場をつなぐ場所

コマツ・ノースアメリカで戦略・イノベーション担当シニアマネージャーを務めるタイムール・カーンは、顧客と協力しながら先進技術を評価し、電動化や新たな動力ソリューションが実際の現場ニーズにどのように応えられるかを探っています。

共に課題を解決する

タイムール・カーンにとって、その変化の道のりをお客さまとともに歩めることこそが、仕事のやりがいです。
カーンは、技術、政策、顧客ニーズが交わる最前線で活動しています。現場の現実を踏まえつつ、新たな可能性を見極めながら、変化し続ける規制、お客さまからの期待、技術動向を踏まえながら、ハイブリッドシステムやバッテリー駆動、水素駆動といった選択肢を、お客さまとともに検討しています。

「一番の魅力は、お客さまの課題を解決できることです」とカーンは語ります。
その課題には、エンジニアだけでなく、規制当局や投資家、地域社会など、多くの関係者が関わることも少なくありません。
しかし、その複雑さこそが、仕事の本質であり、やりがいでもあるのです。
彼は「複雑な課題解決に挑み、政府機関とも連携しながら仕事ができることに、大きなやりがいを感じています」と語っています。

ユーザーから得られる気づき

LHD(ロードホールダンプ) を担当するグローバルプロダクトマネージャーのタイラー・ヴィエンは、現地でのデモンストレーションの場で鉱山の顧客と直接対話しています。こうした密な協働を通じて、実際の坑内作業に即した機械やソリューションの改良が進められています。

オペレーター視点で設計する

コマツにとってイノベーションは、決して机上で生まれるものではありません。地下の現場から始まります。
坑内掘り用ローダーを担当するコマツのグローバルプロダクトマネージャー、タイラー・ヴィエンにとっても、イノベーションの起点は地下の現場です。彼は時間をかけて現場に足を運び、機械を日常的に使うオペレーターや労働者の声に耳を傾けています。

「機械を実際に現場に導入し、オペレーターと話をすることで、これまでの取り組みが形になっていくのを感じます」とヴィエンは語ります。
現場との連携を通じて、性能だけでなく、実際に使用する人のことを考えた機械づくりが進められています。

「私たちの取り組みには大きな意味があると思っています」とヴィエンは続けます。「変化に適応し、課題を乗り越え、これからの道を一緒に見つけていく。その過程こそが大切なのです。」

社会のためのエンジニアリング

コマツでは、小保田、ジマーマン、岡本、中川といったエンジニアたちが、それぞれ異なる技術――ハイブリッドシステム、バッテリー車 、水素エンジン車の開発に取り組んでいます。
しかし、その取り組みが特定の一つの解決策に集約されるものではありません。
彼らを突き動かしているのは、ひとつの答えではなく、「責任を共有する」という姿勢です。
現代社会を形づくる機械や技術を、責任ある形で生み出していく——これこそが、彼らに共通する使命なのです。

前進への道のりは決して単純ではありません。
万能の技術が存在するわけでも、一つのスイッチで解決できる課題でもありません。
だからこそ、コマツのアプローチは、たった一つの未来像に縛られません。
それは、機械を日々稼働させ、信頼を寄せてくれている人々とともに、「世界を、より責任ある方法で、どう築き、掘り、動かしていくか」という問いでもあります。

そして、その背後には、責任を制約ではなく、前進の原動力として捉えるエンジニアたちがいます。

動力の転換は、単なる技術革新ではありません。
何を大切にし、これらの機械とそれを生み出す人々が、どんな未来を形づくろうとするのか。
価値観そのものがここに映し出されています。

 


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