挑戦は、限界を超えていく。

コマツ ハイブリッドショベル開発責任者

杉口貴志

Takashi Sugiguchi


2008年からハイブリッドショベルの担当となり、
量産型のHB365では開発段階から携わっている。

建設機械が1000台導入されれば、1000通りの使われ方がある。

「コマツがハイブリッドを進める目的は現場の課題にある」と杉口は語る。ユーザーの数だけ現場が存在し、1000台が導入されれば、1000通りの使われ方がある。条件が一様でないからこそ、作業を止めることなく迅速に完了させる性能が求められる。エネルギーをいかに効率よくマネジメントし、燃料コストをどこまで抑えられるか。作業性能と環境性能を両立させ現場を動かすこと。それがコマツの考えるハイブリッドの核心だ。

終わりの見えないトライアンドエラーが続く。

もともとフレームなど構造設計を担当していた杉口は、ハイブリッドの開発に携わることになり、まず「エネルギーと燃料消費量を抑えながら、いかに高い作業性能を保つか」というバランスに向き合ったという。実機による品質確認テストでは、トライアンドエラーの連続に悩まされた。たとえば動作が過剰に速い場合はエネルギーの無駄な消費につながるため、その挙動をデータとして解析する必要がある。それに応じて制御ソフトの更新も求められる。さらに、実際に建機を扱うオペレーターの意見も手がかりにしながら、試行錯誤は続いた。

電動と油圧を使い分けるバランスが、ハイブリッドの真髄かもしれない。

ハイブリッド化のメリットは、エネルギーの有効活用にある。ショベルの場合、上部の旋回体を電動モーターで駆動し、減速時に発生する運動エネルギーを回収する。そのエネルギーは、次の旋回動作に再利用されるため、全体としてエネルギー消費を抑えることができる。さらに、もう一つ利点がある、と杉口は語る。それは電動と油圧という2つのエネルギーを使い分けられる点だ。旋回は電動が担い、それ以外の作業は油圧ポンプが受け持つ。それぞれが独立して機能することで、他の作業の影響を受けずに旋回できたり、油圧ポンプの力をより効率的に使えたりといった、従来のショベルでは成し得なかったメリットがあるという。積み重ねてきた実験とデータ解析の成果と言える。

建設機械とモータースポーツ。ハイブリッドの共通項はきっとある。

杉口に、モータースポーツのハイブリッドについて尋ねると、表情がふっと和らいだ。領域は異なっていても、同じエンジニアとして通じるものがあるのだろう。モータースポーツの現場については、マネジメント、技術の両面で、極めて高度なスペシャリストが集まっている印象を持っているという。建設機械の開発とも、どこか根幹の部分で共通する部分があるのではないか、という見方だ。 モータースポーツは、非常に短いサイクルでレースが続く。その中で、設計者とドライバー、それぞれの主張をどのように分析・整理し、どこに最適解を見出すのか。その意思決定のプロセスに強い関心を寄せていた。

最後に、次世代の若いエンジニアへのメッセージを求めた。

「できた喜び」は、かけがえのない財産になる。

やったことがないからやらない。そのような発想だと、なかなか「できた喜び」は得られません。失敗してもいいから、まずはやってみることが大切です。もし失敗したとしても、「次、うまくいくためにはどうしたらいいだろう」と失敗を振り返ればいい。若いうちは、いくらでも失敗できると思うので。臆病にならず、自分のやりたいこと、やってないこと、できるようになりたいことをチャレンジしてみる。それを支えてくれる土壌が、コマツにはあると思います。

ヨーロッパの現場で稼働するハイブリッドパワーショベル HB365

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