挑戦が響き合う。
アトラシアン・ウィリアムズF1チーム 最高技術責任者
パット・フライ
Pat Fry
数々の名門チームで上級エンジニアを歴任し、グランプリ優勝や
コンストラクターズ選手権、ドライバーズ選手権の獲得に貢献。
豊富な経験と技術的知見でチームを牽引する。
パット氏は、よどみなく言葉を紡いだ。 F1では近年、環境対応を背景に、レギュレーションの見直しが続いているからだ。2014年に続き、2026年でも新たな規則が導入され、電動出力の比率が大きく引き上げられた。これはハイブリッドシステムの設計思想そのものにも影響を与える変更だ。発電を担うモータージェネレーションユニットの最大出力は350キロワットに達し、電気とエンジンの出力配分は50:50に※。
戦略面では、バッテリーの充電と放出をいかに効率良く管理するかがレース展開を左右する重要な要素となる。
※2026年4月現在の規制。F1のレギュレーションは基本的にシーズン単位で定められるが、レースを経てハイブリッド運用の技術や解釈を更新する可能性があり、チームは常にその対応に追われている。
数々のチームを率いてきたパット氏。F1にハイブリッドシステムが導入されたことにより、レースの概念そのものが変わる瞬間に立ち会ってきた。かつてはスピードを競う側面が強かったが、現在では、一周の中でどのタイミングでエネルギーを回収し、どこで放出するか。エネルギーマネジメントが勝敗を分ける競技へと変化している。さらに100%サステナブル原料の使用が義務化され、マシンの小型化・計量化も進む。バッテリー容量には限界があり、回生エネルギーも無尽蔵ではない。加えて、コースごとに条件は大きく異なる。課題は山積みだった。
話題の核心に迫るにつれ、パット氏の表情は一層引き締まっていく。モータースポーツでは、一周のラップタイム更新を目指し、どのタイミングでエネルギーを放出するのが最適なのか、膨大なシミュレーションが繰り返される。チームはその結果に基づいて戦略を組み立て、マシンの挙動やエネルギー残量を把握しながら、状況に応じた判断を下す。こうした エネルギーの回収と放出のマネジメントが、より戦略的で精度の高いレースを実現する。
「モータースポーツと建設現場のマシンには、共通する原則がある。」パット氏の言葉が熱を帯びていく。両者に共通するのは、データを極めて重視する姿勢だという。 モータースポーツでは、データに基づいてマシンを扱い、その挙動を正しく最適化する技術が磨かれてきた。シミュレーションと実測データの蓄積によって、知識が構築される。環境が異なっても、最適化する方法、データを徹底的に検証し、最適解を導くというプロセスは変わらない。その意味で、コマツのエネルギーマネジメントへの取り組みに強い関心を示していた。
最後に、次世代の若いエンジニアへのメッセージを求めた。
まず最初に言いたいのは、自分が楽しめるものを見つけることです。この業界では、設計やシミュレーションから製造に至るまで、あらゆる領域で絶えず改善を追究し続けなければなりません。その中で探究心を持ち、試行錯誤を重ねて改善を試みる姿勢こそが、F1のエンジニアと他分野のエンジニアを分ける大きな違いだと考えています。