3月中旬にメルボルンで開催されたF1ルイ・ヴィトン・オーストラリア・グランプリ2025では、約20名のメンテナンス技術者がアトラシアン・ウィリアムズ・レーシングのチーフメカニック、ベン・ハワード氏と面会し、ピットでの仕事について理解を深めました。
マスタークラスの参加者は、F1ルイ・ヴィトン・オーストラリア・グランプリ2025開催中のファンゾーンで、アトラシアン・ウィリアムズ・レーシングのスタッフと会い、FW47レースカーを
間近で見る機会を得ました。
F1では一秒たりとも無駄にできません。ほんの少しの遅れが、レースに勝つか、負けるかの違いを生みます。
アトラシアン・ウィリアムズ・レーシングのピットクルーは、マシンがピットに戻ると、通常2.5秒で4本のタイヤを交換します。それは、何時間にもおよぶ練習と計画、そしてチームワークを要する、まさに連携と動作の妙技です。
そして、これはコマツ・オーストラリアの整備士たちの日々の業務とも通じる点があります。ダンプやホイールローダーのタイヤ交換ははるかに時間がかかるものの、高度な機器のメンテナンスの技術は、基本的な考え方や課題という点では同じです。
この整備士たちは、3月にメルボルンで開催されたF1ルイ・ヴィトン・オーストラリアグランプリ2025に先立って実施されたメカニックマスタークラスにも参加しています。コマツはアトラシアン・ウィリアムズ・レーシングのパートナーシップの一環として、レーシングチームの主任メカニックであるベン・ハワード氏との面会に招かれました。彼らは、「PM100」というプログラムに参加している、オーストラリア各地の5つ支店から選ばれました。このプログラムは、キャリアの浅いコマツの技術者を対象に、メンテナンスの重要性を強調するものです。
「話の中心となったのは、F1のピットストップはわずか2.5秒で完了するという点でした。しかしすべての作業はピットストップのかなり前に準備されており、実際には2時間半もかかっています」と、コマツ ブランド戦略事業部 副部長のトッド・コノリー氏は語ります。
「だからこそ、マシンがピットに入ってきたときには、全員が自分のすべき作業や使うべき工具を正確に把握しており、安全手順もすべて理解されています。全員が互いに連携して作業しようと努めています。全員にバックアップがいて、誰かがすぐに代わりに入れる体制が整っているため、あの2.5秒は極めて綿密に調整され、非常によく計画されているのです。」
整備士たちは(その多くはキャリアの浅い技術者ですが)、対話を通じて、タイミングや準備などについて学びました。
技術者たちは、ピットクルーチームが常に一流であり続けるための工夫について、ハワード氏に質問する機会を得ました。一方でハワード氏も、オーストラリアでは国土の大部分が未開であり、作業現場が主要都市から遠く離れた僻地にあることも多いという、現地の技術者の日常について参加者との対話を通じて学ぶことができました。
コマツの機械は過酷な環境にも耐えられるよう設計されており、1回の修理に何時間、場合によっては数週間かかることもあります。とはいえ、作業が完全に停止する前に問題を修復するためには迅速な対応が求められることもあり、時間が重要であることに変わりはありません。
「大型機械もF1マシンと同じです。適切に整備しなければ、その車両は止まり、結果として作業全体が止まってしまいます」と、今回のマスタークラスを企画したコマツ・オーストラリアのサービス担当ゼネラルマネージャー、アンディ・ウィガンは語ります。
アトラシアン・ウィリアムズ・レーシングとコマツのどちらにも、マシンの実作業を担当するチームと、舞台裏で作業し、リモートサポートを提供する別のチームの2つのチームが存在します。
コマツのマシンは、アトラシアン・ウィリアムズのドライバー、アレックス・アルボンとカルロス・サインツがドライブするFW47と同様、パフォーマンスを重視して構築された複雑なマシンであり、効率的でアクセスしやすいマシン修理を可能にするように設計されています。
そして大きな共通点として、継続的なメンテナンスが機械を稼働させ、最大限の性能を発揮させ続けているという点があります。メンテナンスとは単なる修理ではなく、将来的な重大な故障を防ぐための予防保守も含まれます。決勝レースは1日だけですが、レースウィークエンド全体では3日から4日に及ぶこともあります。決勝レースがメインイベントではありますが、その前には一連のフリー走行があり、輸送後の車両に問題がないか確認し、レース当日に向けて微調整が行われます。「チームピットストップ練習」と呼ばれる、ピットクルーチームの準備状況を確認するためだけの練習もあります。これらの技術者は、何年もの訓練を経てモータースポーツチームに加わります。
コマツの技術者が派遣される場所の中には過酷な環境もあるため、同様の準備やリハーサルが必要になります。現場では特定の部品が手に入るとは限らないため、迅速な判断で解決策を考え出すことが求められます。また、複雑な問題のトラブルシューティングには、社内の他の技術者やリモートサポートのスタッフによる協力が必要になることもあります。
「すべてはチームワークに集約されます」とコノリーは語ります。その協力とチームワークの精神こそが、マスタークラスのハイライトでした。ウィガンによると、チーム同士のコミュニケーションの様子を見て、PM100プログラムのサービス技術者を目指して働きたいと言う技術者が彼のもとに来たそうです。「こうした重要な役割に携わりたいと思うのは、本当に素晴らしいことだ」と彼は語ります。
コマツの技術者はオーストラリアの主要都市、ブリスベン、メルボルン、シドニー、パース、ケアンズに配置されており、これらの都市は互いに大きく離れています。このイベントは、PM100の技術者たちにとって、ベン・ハワード氏だけでなく、互いからも学び合い、交流する機会となりました。イベント終了後も多くの参加者が連絡を取り合っており、同じ道を歩む仲間として、アドバイスやヒントを共有し合い、気軽に会話できる関係が続いています。
「通常そのキャリアレベルでは、どこかでの研修などを通じてでなければ実際に顔を合わせることはなく、しかもその研修もたいてい東と西に分かれている」とウィガンは言います。「しかし参加した技術者やスケジュール担当者と話をしたところ、たとえばパースに話せる相手がいて、その人の経験を参考にできるのが本当にうれしいと言っていました。」
コマツとアトラシアン・ウィリアムズ・レーシングの提携は、次世代の人材育成を目的に築かれました。メカニックマスタークラスは、その精神を職場に取り入れ、キャリアの浅いコマツ社員に学びと成長を促すいくつかの取り組みの1つです。