今、コマツのキーワードにSLQDC*という優先順位付けがあります。数十年前、私が新入社員のころ、ある試験を行う際に手順を飛ばして実験を行い、機械が危険な状態になってしまうような事態を起こしてしまったことがありました。上司が大慌てで飛んできて、放った言葉は「大丈夫か?けがは無いか?試験片はまた買えばいい、お前にけががなければそれでいいんだ」でした。大目玉を食らうと思いこんでいた私にとって、上司の暖かい言葉は衝撃で、今でも目頭があつくなります。コマツの安全に対する考え方、信念は近年急に高まったわけではありません。100年の歴史から紡がれた当たり前の考え方です。
*SLQDC(Safety and Health、Law(Compliance)、Quality、Delivery、Cost)は、コマツの全社員が物事を判断する際の優先順位を表しています。
WA475/470-10のプロジェクトでは、エンジンやモーター、トランスミッションなどの動力伝達を担う装置の性能を評価するトランジェントベンチの構築を担当しました。設計側の目標は、新しい変速装置を作りたい、こんなクルマを作りたいと明確なものがありますが、全部設計途中で試作品すらない…。やはり、ものが存在しないのに試験機だけを作るというのが一番難しかったですね。そんな状況の中、短期間でベンチ試験設備の構築のために、生産工場の治具設計や部品調達、組み立ての担当者に非常に助けてもらい実現に漕ぎつけることができました。コマツのチームワークはたった一声で本部の垣根を簡単に超えるところが魅力ですね。