生産技術開発:D475A-8

働く人の安全を守るために、工場の自動化を目指した

N・S/ 2012年入社/大学院機械物理工学卒/所属部署(当時):生産本部生産技術開発センタ
制御関係の勉強を活かして、工場の中で働く人の安全のために、さまざまな業務を自動化できる仕事を探していました。

「ものづくり日本大賞」を受賞。安倍前首相と握手した経験も

工場の設備のつながる化、見える化により、生産を最適化するKom-micsという新たなシステムを開発しました。社内や協力企業、海外の現地法人にも導入されて、現在では900台以上の工作機械に設置されています。D475A-8のアクスルを製造した小山工場の生産ラインにもKom-micsが導入されており、以前に比べておよそ20%の加工改善を達成。これによりD475A-8の生産原価の低減を達成しました。また、Kom-micsは、ものづくり日本大賞の内閣総理大臣賞にも選ばれました。その際に、首相官邸を訪問して安倍元首相と握手したという印象深い経験もあり、仕事を通じて本当にさまざまな世界を経験できたと思っています。

Kom-micsのシステム構築なら、win-winの関係を構築できる

建設鉱山機械の需要は景気の先読み指標といわれる程に変動が大きく、景気が良い時は大増産、低迷する時は生産量がほとんどないまでの減産ということが繰り返されてきました。この状況はコマツの大切なパートナーである協力企業でも同じで、場合によっては企業の存続に関わってきます。もし協力企業の方々とwin-winの関係が保てず、協力企業が破綻するようなことがあれば、コマツも生産が止まってしまう一大事となります。こうした状況を回避するため協力企業の生産性を改善して利益が出るようにシステム構築するのが、Kom-micsです。このシステムには、コマツと協力企業のサプライチェーンの生産ライン状況をリアルタイムで把握する機能があります。例えば、特定の協力企業に負荷がかかってしまっている状況をいち早く把握し、同一の部品を生産できる企業へタイムリーかつ簡単に発注を行うことができ、結果としてサプライチェーン全体の負荷の平準化を目指すことができます。

多品種少量生産というニーズが、生産現場のイノベーションを生みだした

製造業の中で、どこよりも先にコマツが、生産を最適化するKom-micsというシステムを開発できた背景には、いろいろな要因があります。自動車メーカーなどの、少品種大量生産では、生産ラインが企画の段階ですでに最適化されているため、後から改善する必要がほとんどありません。一方でコマツのような多品種少量生産の場合だと、生産ラインもその都度最適化されるのではなく、既存の生産ラインで柔軟に対応していたため、新機種であっても既存設備の加工で対応していました。また、市場や売れ筋の変化があった場合、サプライチェーン内の負荷を迅速に平準化することが難しく、各ラインの負荷状況の見える化を実現するニーズが高まりやすかったといえますね。こうした変動ありきの市場環境と多品種少量生産の生産体制が、他社に先駆けたイノベーションを生みだすきっかけになったんです。

画期的なシステムを、もっと多くのメーカーに

Kom-micsに対し多くの問い合わせを受けています。現状は、生産技術者のいる大手メーカーでの導入事例が多いですね。誰でも触ってパッとすぐ分かるものではなく、多少の専門的な知識が必要になるからです。今後は、中小企業にも使えるように、コマツだけではなく、例えば改善をサポートしてくれる会社にデータを公開してコンサルティングをする仕組みなどを検討しています。機械加工の例で言うと、工具メーカー、機械加工メーカーにデータを公開して、設備や加工を改善するためのコンサルティングができないかを、コマツ社内と協力企業との協業でトライアルしています。