エグゼクティブインサイト

今吉

コマツ 代表取締役社長 兼 CEOの今吉です。
これまで「コマツ社長インタビュー」として、コマツの強みや今後の見通し、中期経営計画の取り組みなどをお届けしてきました。
今後は、中期経営計画の成長戦略を中心に、テーマに応じてより詳しくお伝えするため、テーマに関連するトップマネジメントも登場し、直接ご説明いたします。このコーナーの名称も新たに、「エグゼクティブインサイト」としてお届けします。
今回は、中期経営計画の重点テーマの一つと位置付けている、施工現場における人手不足や安全性向上などの課題解決に向けた、建設・鉱山機械の自動化・遠隔操作化の取り組みについてです。

【新中期経営計画の概略】
コマツは2025年4月から3カ年の中期経営計画 「Driving value with ambition  価値創造への挑戦」をスタートしました。
中期経営計画の基本コンセプトは、価値創造を通じて、社会課題の解決と収益向上の好循環を生み出し、持続的な成長を実現することにあります。
今回の中期経営計画では、「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」となることを目指し、製品の高度化によるモノ価値と、施工現場の最適化ソリューションによるコト価値を進化させ、新たな顧客価値の創造に挑戦していきます。
これを実行するための成長戦略3本柱として、①イノベーションによる価値共創、②成長性と収益性の追求、③経営基盤の革新 を掲げ、重点的に活動を展開しています。
今回お届けする「自動化・遠隔操作化」は、イノベーションによる価値共創として、人手不足や安全性向上などの課題に直面するお客さまへのソリューションを提供するものです。

【自動化・遠隔操作化の重要性】
建設・土木の現場では、インフラ整備や老朽化した設備の更新、頻発する自然災害の復旧などへの対応ニーズが一段と高まっています。
鉱山現場でも、世界的な人口増加やデジタル社会への移行を背景に、生活に欠かせない鉄鉱石や銅などの鉱物資源の採掘需要が拡大しています。
一方で、少子高齢化などを背景に、こうした状況下で安全性と環境への適応を確保しながら、生産性を高める効率的なオペレーションの実現が、お客さまにとって大きな課題となっています
具体的な活動内容については、草場CTOよりご説明します。草場さん、お願いします。

草場

はい、コマツ CTOの草場です。
ここからは、私がご説明いたします。

【コマツの研究・開発体制について】
まずは、コマツの研究開発体制をご紹介します。
コマツの研究開発体制は、主に商品企画本部・CTO室・開発本部の3部門で構成されています。
この3部門が連携し、自社技術と外部の先端技術を組み合わせ、研究開発を進めています。
研究開発への投資も年々強化しており、2025年度の投資額は1,190億円の予定です。
中期経営計画では、カーボンニュートラルへの対応と共に、より高度な自動化・遠隔操作化を事業横断的なテーマとし、それに対応する機械とソフトウェア技術によるソリューション開発を、重点テーマの一つと位置付けています。

【自動化ロードマップ】
コマツでは、自動化・遠隔化技術の開発を「自動アシスト機能」、「遠隔操作」、「遠隔操作プラス自動アシスト機能」、「自律化」の4ステップで進めています。
Step1 「自動アシスト機能」では、作業機操作のセミオート化として、2013年にICTブルドーザー、2014年にICT油圧ショベルを開発し、世界で初めて市場導入しました。また、オート掘削機能を搭載したホイールローダーや、操作のセミオート機能を搭載したフォークリフトも展開しています。
最新の3D施工機能を標準搭載した油圧ショベル「PC200i-12」では、掘削した土を、ダンプトラックへ積み込む作業のセミオート化を実現しました。今後、掘削など他の作業での自動化レベルを上げていきます。

【一般建機における遠隔操作技術】
次にStep2「遠隔操作」です。
ソリューションサービスを手掛けるグループ会社の、株式会社EARTHBRAINと共同で、2023年3月に一般建設機械向けの遠隔操作システムSmart Construction Teleoperationを開発し、お客さまへの提供を開始しました。
このシステムにより、事務所など、現場から離れた安全で快適な環境から油圧ショベルを操作することが可能となりました。
また、1台のコックピットから複数の建設機械を切り替えて操作できるため、人手不足の解消に加え、生産性向上にも大きく貢献します。
さらに、同じシステムを搭載したモビリティオフィスも販売を開始しました。機動性を高めることで、災害復旧など緊急性の高い現場での活用が期待されています。

【鉱山機械における遠隔操作技術】
Step3は「遠隔操作プラス自動アシスト機能」の組み合わせです。
資源大手のAnglo American社と提携し、2023年より、ブラジル南東部のMinas-Rio鉄鉱山で大型ICTブルドーザーの遠隔操作仕様車の商用稼働を開始しました。
当該機は、集められた鉱石を大型ブルドーザーで整形しながら次の工程に供給する作業で使用されます。
この作業は鉱山の生産性を左右する重要な業務である一方、危険な傾斜地での熟練作業が求められます。
この作業を遠隔操作化することで、より安全で快適な環境でのオペレーションを実現しました。
さらに、コマツ独自のICTマシンコントロールと、グループ会社のモジュラーマイニングシステムズ社のマシンガイダンスシステムを組み合わせることで、2km以上離れた遠隔地から熟練オペレーターでなくとも簡単に操作することが可能となりました。

【鉱山機械における自動化技術】
Step4は「自律化」です。
コマツは2008年、世界で初めて無人ダンプトラック運行システム、「AHS」の商用稼働を開始しました。
2025年9月末時点で、世界6カ国26カ所の鉱山に940台を導入しており、コマツがフロントランナーのビジネスです。
鉱山のダンプトラックは24時間稼働するため、1台に複数人のオペレーターが必要です。
さらに鉱山は高地や寒冷地など過酷な環境が多く、また、熟練オペレーター不足といった課題があります。加えて、安全性の向上、生産量の最大化が、お客さまの共通の課題となっています。
こうした課題に対し、コマツのAHSは大幅な省人化や高い安全性を実現し、最適な運転制御により環境負荷軽減にも貢献しています。
現在、主要な資源会社の鉱山では、無人ダンプトラックの稼働が主流になっています。
また近年は、AHS上で自動走行する無人散水車の開発や、ライトビークルの開発においてトヨタ自動車との協業など、さらなるAHSの商品力強化や、鉱山現場の最適なフリート管理を実現するソリューション開発にも取り組んでいます。

【協業について】
自動化・遠隔操作化の開発スピードを加速し、お客さまの要求や市場導入への対応スピードを高めるため、自社技術の強化に加え、優れた技術をもつパートナーとの協業など、オープンイノベーションの活用も積極的に進めています。
2025年9月には、自動化に関する 2件の協業を発表しました。

【Applied社との協業】
1件目は、先進的な車載システムの開発を手掛けるアメリカのApplied Intuition社との、SDVアーキテクチャと自動化車両プラットフォームの開発に関する協業です。
本協業では、Applied社のAI・シミュレーション技術と、コマツが培ってきた自動運転技術を組み合わせ、思考・学習・進化する鉱山機械の開発を推進します。
この次世代鉱山機械は、ソフトウェアで機能を定義するSoftware Defined Vehicle(SDV)の新車体アーキテクチャと、拡張可能な自動化機能、AIと機械学習の機能を備えています。
これによりAHSが進化し、飛躍的な生産性向上、高精度かつ効率的なオペレーションなど、より高度な顧客価値の提供が可能となり、競合との差別化を図っていきます。

【ティアフォー社との協業】
2件目は、オープンソースの自動運転ソフトウェアを先導する株式会社ティアフォーとの、建設機械自動運転技術の実用化にむけた協業です。
この協業にはEARTHBRAIN社も加わっています。
本協業では、ティアフォー社の自動運転技術、コマツの建設機械の車両技術、EARTHBRAIN社のデジタル施工管理という3社の強みを融合し、自動運転システムと管制システムの開発を行います。
当社のアーティキュレートダンプトラックとリジッドダンプトラックの自動運転化を進め、2027年度までに自動運転システムの実用化を目指します。

【自動化・遠隔操作化の将来】
コマツは、製品の高度化と、施工現場の最適化ソリューションの両軸で、さまざまな機種・クラスにおいて自動化・遠隔操作化を展開しています。
さらに、将来的には水中や宇宙での活用も視野に入れています。
1971年にラジコン操作の水陸両用ブルドーザーを開発し、河川や海岸での浚渫工事や災害復旧に活用してきました。
2025年10月に閉幕した「大阪・関西万博」では、後継機となる「水中施工ロボット」のコンセプトモデルを出展しました。
最新のICT機能と自動制御を備えた電動式かつ遠隔操作型の「水中施工ロボット」により、高い精度で設計面に沿った形状に仕上げ、将来的には防災・災害復旧はもちろん、藻場や干潟の造成など、新たな水中施工工事の実現を目指していきます。
さらに、月面建機の開発に向けた研究も進めています。
「宇宙建設革新プロジェクト」において、月面に長期滞在可能な基地を建設するための、月面建機の研究開発を担っており、未知なる領域においても挑戦を続けています。
今回は、自動化・遠隔操作化をテーマにお届けしました。
これにとどまらず、私たちはお客さまをはじめ技術開発の協業パートナーと共に、品質と信頼性を追求し ものづくりと技術の革新で社会課題の解決に貢献するイノベーションの創出に挑戦し続けます。