社長メッセージ

変化を力に変え、成長への挑戦を続ける
改善と革新を積み重ね、持続的な成長を実現します

【外部環境の認識】変化を力に変えるレジリエンス経営
2025年4月の社長就任から早1年が経過しました。この1年を振り返ると、世界情勢は日々大きく変化し、従来の秩序や価値観が急速に揺らいでいることを強く実感しています。各国・地域における政策や規制の変化、地政学リスクの深刻化、サプライチェーンの分断など、企業経営を取り巻く前提条件そのものが大きく変わりつつあり、グローバル企業にはこれまで以上に高度な対応力が求められています。
こうした時代に求められるのは、変化を前提とした柔軟な経営体制です。事業や地域ごとの状況変化を的確に捉えながら、開発、調達、生産、販売などの各機能において、必要に応じてオペレーションそのものを見直していく力がこれまで以上に重要になっています。なかでも私が特に重要だと考えているのが、調達・生産におけるレジリエンス(強靭性)の強化です。需要変動やサプライチェーン上の課題、地域ごとの事業環境の変化などに応じて、調達・生産を支える仕組みや管理体制を柔軟かつスピーディーに改善していく体制が欠かせません。
コマツはグローバルオペレーションのもと、クロスソースやマルチソース体制を推進し、柔軟な供給体制を構築してきました。この1年も、レアアースに関連する調達リスク、半導体不足、中東情勢を背景とした原油由来物資の調達リスクなど、さまざまな課題への対応を進めてきました。その過程で、従来十分に把握できていなかったサプライチェーン上の材料や部材、さらには協力企業(サプライヤー)が使用する塗料に至るまで可視化が進み、調達管理のレベルそのものを引き上げることができました。結果として、原価改善などの効果も生まれており、こうした取り組みを危機対応にとどめず、競争力の強化につなげています。
コマツはこれまでも、景気変動や市場環境の変化、災害やサプライチェーン上の課題など、さまざまな困難に直面してきました。そうした経験を経ると、必ず新たな改善点や学びが見えてきます。重要なのは、危機を単なる対症療法で終わらせるのではなく、組織力や競争力の強化につなげていくことです。私はそれこそが、コマツにとってのレジリエンスだと考えています。守りの姿勢だけでは成長することはできません。今後どの領域に成長投資を行うのか、判断がより難しい局面にあるものの、ピンチの時こそ成長機会であると捉え、将来を見据えた投資を継続していきます。
【中期経営計画】成長戦略を着実に推進し、次の変革につなげる

中期経営計画「Driving value with ambition  価値創造への挑戦」(2025~2027年度)では、「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」というありたい姿の実現に向け、「イノベーションによる価値共創」「成長性と収益性の追求」「経営基盤の革新」の3本柱に取り組んでいます。この1年を振り返ると、重点活動として位置付けた各プロジェクトは着実に進捗しています。
「イノベーションによる価値共創」では、技術進化のスピードや競合他社との開発競争は一段と激しくなっており、開発力や迅速な市場投入がこれまで以上に問われています。電動化に向けた技術進化や市場形成の道筋はまだ不透明ですが、多様な動力源への対応などの技術の方向性そのものは変わりません。むしろカーボンニュートラルへの対応に加え、近年のエネルギーコストの上昇などを背景に、お客さまからの期待は更に高まっています。コマツはこうした多様なニーズに対応するため、全方位での開発を進めています。また自動化・遠隔操作化では、Applied Intuition社と鉱山機械のSDV*1化について協業を開始したほか、土木・砕石現場向けのダンプトラック作業の自動化として、グループ会社の株式会社EARTHBRAINと株式会社ティアフォーとの協業を進めています。先進的な技術を持つ外部パートナーとの提携を通じてスピード重視で進めていきます。
また、建設現場ではICT施工への理解も着実に広がっています。当社が2015年から展開してきた「スマートコンストラクション®」は、喫緊の人手不足や安全意識の高まりを背景に、お客さまの現場における活用が着実に進んでいます。コマツは代理店への人材派遣や教育支援を通じて活用を後押ししており、こうした取り組みをグローバルにも展開しています。国や地域ごとの差はあるものの、今後更に広がっていくと見ています。
「成長性と収益性の追求」においては、成長市場への投資と事業拡大に着実に取り組んでいますが、建設・鉱山機械市場の成長率が限定的となるなか、更なる成長に向けた打ち手も求められています。ここで重要となるのが、景気変動の影響を受けやすい新車市場に対して、比較的収益が安定しているアフターマーケット事業です。コマツは、お客さまの機械のライフサイクル全体を通じて価値を提供するソリューションパートナーを目指しており、その手段としてアフターマーケット事業を強化しています。特にリマン事業*2は、お客さまの機械を長期的にサポートするなかで、機械やコンポーネントの劣化状態に関する知見を蓄積し、技術開発やサービス改善につなげることができる重要な事業です。2026年には、北米の需要伸長やグローバルでのリマン製品の供給力の強化を見込み、SRC of Lexington社(アメリカ)のリマン事業を買収しました。
また、地域ごとに競争環境やお客さまのニーズは大きく異なるため、日本から一律に方針を示すのではなく、各地域が主体的に競争軸や成長機会を見極めながら事業を推進していくことが必要です。販売代理店は、地域のお客さまに最も近い立場で、商品、サービス、ソリューションを提供しながらコマツの価値を届ける重要なパートナーです。成長市場の東南アジアでは、昨年、代理店の再編を行い、販売・サービス体制の強化を進めています。
「経営基盤の革新」では、ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)更新プロジェクトをはじめとする重点施策が確実に進捗しています。

*1 Software Defined Vehicle。車両の機能や価値がハードウエアではなく、ソフトウエアによって定義される次世代の車
*2 リマニュファクチャリング事業。長時間稼働した建設・鉱山機械から回収したコンポーネントを新品同様に再生し、お客さまのオーバーホール(分解・点検・修理)のタイミングなどに合わせて、リーズナブルな価格で提供する循環型ビジネス。コマツがキーコンポーネントを自社開発・自社生産している強みを活かしたビジネス

【レガシーへの挑戦】強みを活かしながら、変化に適応し続ける組織へ

コマツの強みは総合力です。建設・鉱山機械の幅広い商品ラインアップに加え、現場全体の安全性や生産性向上を支援するソリューションを展開し、「モノ」と「コト」の2軸で価値を提供しています。また、キーコンポーネントの内製化を実現する技術力、グローバルに展開する代理店網、なかでもマイニング(鉱山機械)事業では直営の代理店によるきめ細かい販売・サービス体制を通じて、お客さまと長期的な関係を構築しながら継続的に価値を提供するなど、バリューチェーン全体にわたる強みを持っています。またコマツウェイや創業100周年を機に整理した価値観、そしてSLQDC*3の考え方は、これからも守るべきコマツの基盤だと考えています。一方で、変化の激しい時代においては、組織や事業の捉え方を柔軟に変えていく必要があります。実際に私が社長就任以降、明確に見直してきたことが二つあります。
一つは、日米欧を「伝統市場」、その他の地域を「戦略市場」とした従来の市場区分です。これまでは一定の前提のもとで市場を分類してきましたが、いつの間にか固定的な枠組みとなり、地域ごとの実態や競争軸を改めて考える機会が失われてしまう懸念がありました。だからこそ一度枠組みを外し、その時々の市場環境やお客さまの変化を見極めながら、機会とリスクを捉え直していく必要があります。
もう一つは、これまでの機能軸と地域軸に、マイニング、コンストラクション(一般建機)などの「事業軸」の視点を加えて3軸経営としたことです。グローバルでM&Aを重ね多様な事業や商品が加わるなかで、日本の機能本部が中心となる体制では機動性に課題がありました。例えば建設機械・車両事業の売上高の半分を占めるマイニング事業では、2017年のジョイグローバル社買収以降、自社で代理店を保有する直接販売・直接サービス体制を採用しており、コンストラクション事業の独立代理店を通したビジネスモデルとは大きく異なります。そのため、相互の良い点を学び合いながら競争力を高めていくために、「事業軸」の視点を加えました。組織の見た目が大きく変わったわけではありませんが、考え方は確実に変わり始めています。
また、上記2点の見直し以外に開発体制についても考え方を変えつつあります。コマツは長年、自社での開発を強みとして成長してきましたが、技術進化が著しく加速するなかで、自社のリソースだけですべてに対応することは難しくなっています。そのため近年は、キーコンポーネントは自社で開発・生産するという方針は維持しつつも、外部パートナーとの協業を進めながら、開発体制の強化と市場導入までのスピード向上に取り組んでいます。また、地域的には、日米欧を中心とした開発体制に加え、各地域の開発リソースの活用を進めています。実際に現地開発も始まっており、例えばインドでは、初の現地開発モデルとなる小型油圧ショベルの販売が始まるなど成果も出始めています。地域ごとのニーズをより迅速に商品へ反映するとともに、多様な技術や知見を取り入れることで、開発力そのものを高めていきます。
こうした変革を進めるうえで大切にしたいのは、単に組織の形を変えることではなく、本質を考え続けることです。コマツは真面目で実直な企業文化を持つ会社です。TQC(Total Quality Control:総合的品質管理)を原点に、ルールに則って確実に運用・管理する文化を築いてきました。一方で、マニュアルを守ること自体が目的化してしまうと、変化への対応力や機動性は損なわれてしまいます。重要なのは、「なぜこのルールが存在するのか」という本質を考え続けることです。物事の本質を理解し、自ら考えて行動しなければ、急速な変化には対応できません。私は日頃から社員に対し、「旧態依然に陥ることなく、本質を考えて行動してほしい」と伝えています。
変化の激しい時代だからこそ、従来の成功体験や固定観念にとらわれず、考え方そのものを進化させ続けることが重要です。それがコマツの総合力を更に高め、持続的な成長につながると考えています。

*3 Safety(安全衛生・健康)、Law(法令遵守)、Quality(品質)、Delivery(納期)、Cost(コスト)。コマツグループ社員が業務を進めるうえで徹底している意思決定の優先順位

コマツブラジル有限会社で工場見学する様子
【成長の鍵】AI時代における競争優位を築くために

AIの進化がもたらすインパクトは、これまでのIT化やDXとは次元の異なるものだと認識しています。AIは、ビジネスや社会のあり方そのものを変える可能性を持つ一方で、その本質やリスクを正しく理解したうえで活用することが不可欠です。
私は正体のわからないものに振り回されないようにするためにも、まずは自分自身で本質を理解することを大切にしてきました。今回G検定*4を取得したのもその一環です。AIの歴史や構造、ガバナンス、限界やリスクまで幅広く学ぶなかで、生成AIは単なる技術ではなく、ビジネスや社会のあり方そのものを変える可能性を持っているということを改めて実感しました。一方で、AIはあくまで道具であり、最終的な判断は人間が担うべきものであるという認識も強くしました。
そのうえで、コマツはAI時代において大きな競争優位性を有していると考えています。AIの価値を左右するのは、独自のデータと、それを取得するためのハードウエアであり、当社はその両方を有し、かつ社会に広く受け入れられています。例えばコマツは、Komtrax(機械稼働管理システム)、KOM-MICS(工場稼働状況可視化システム)、AHS(Autonomous Haulage System:鉱山向け無人ダンプトラック運行システム)、スマートコンストラクション®などを通じて、長年にわたりICTとデータを活用した価値創出に取り組んできました。これらを通じて蓄積された機械稼働データ、施工データ、現場の知見は、当社の競争力の源泉となる重要な資産です。
さらに、現在開発を進めている建機のSDV化、すなわち機械の機能や価値をソフトウエアによって高めていく取り組みを通じ、機械から取得できるデータの量や種類が一層拡大していきます。AIを活用することで、こうしたデータや現場の知見をこれまで以上に活用できるようになり、品質やサービス、お客さまへの価値提供を更に進化させていきます。
中期経営計画で掲げた「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」というありたい姿を現実の仕事と現場で具体化していくうえで、AIは重要な実行手段です。開発、生産、サービス、バックオフィスも含め、全社で取り組むべきテーマとして、現在はCTOをトップとして、ルール整備と並行しながらAIの導入・活用を加速しています。今後もAIの進化を確実に競争力につなげるため、総力戦で挑戦を続けていきます。

*4 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している、AIやディープラーニングをビジネスで活用するための基礎知識・リテラシーを問う検定試験

【株主・投資家との対話】資本市場との対話を通じて経営を進化させる
コマツは企業価値を「すべてのステークホルダーからの信頼度の総和」と定義しており、株主・投資家の皆さまと信頼関係を深めることは、経営における重要な責務です。そのため当社は、従来から経営トップ自らがIR活動に取り組む姿勢を明確に打ち出し着実に実行してきた結果、市場から高い評価をいただいています。私自身も過去にIRマネージャーの経験があり、投資家との対話の重要性を強く認識しています。
投資家との対話は、株式市場の反応や、投資家の関心・傾向を直接把握できるという点で、大きな意味があります。近年の資本効率やキャッシュフローに対する期待の一層の高まりも踏まえ、中期経営計画では新たにフリー・キャッシュ・フローの財務目標を設定しました。また、株主還元の観点では、自己株式取得も3年連続で実施しています。
今後も資本市場との対話を通じて、当社の企業価値創造の全体像をより明確にお伝えしていきます。コマツは、単にメーカーとして機械を提供してインフラ整備や資源開発を支えるだけでなく、お客さまの課題解決に貢献するソリューションパートナーです。モノ価値とコト価値を組み合わせることで、現場の生産性・安全性向上に継続的な価値を創出しています。
こうした多層的な強みや成長戦略を、わかりやすくかつ一貫性をもってお伝えするとともに、投資家の皆さまとの建設的な対話を重ねることで、中長期的な企業価値の向上と信頼の深化につなげていきます。
海外IRで機関投資家と面談する様子
【サステナビリティへの取り組み】社会課題への対応を持続的成長につなげる
ステークホルダーの信頼度を高めるためには、成長性と収益性に加え、それを支えるガバナンスやサステナビリティへの取り組みも重要です。当社では、社会・環境への影響も考慮のうえで取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を評価し、中期経営計画を策定しています。
そのなかでも人材は新しい価値を生み出す重要な経営資源です。そのため、社員一人ひとりのエンゲージメントを高め、能力を最大限発揮できる環境を整えることは、終わりのない経営課題です。コマツはグローバルな事業展開やM&Aを通じて成長してきた結果、現在では売上高の約9割を海外が占め、グループ社員約6万7千人のうち約7割が日本以外で働いています。これまでも海外人材の活躍推進や本社機能のグローバル化を進めてきましたが、日本中心の発想にとらわれることなく、多様な視点や価値観を経営や事業運営に活かしていくことが、イノベーションの創出と持続的な企業価値の向上につながると考えています。今後もこうした取り組みを更に進化させていきます。
環境分野では、カーボンニュートラルへの対応が大きなテーマです。一方で、お客さまが求めているのは環境対応だけではありません。近年はエネルギー価格の上昇を背景に、燃料コストや運用コストの削減に対するニーズも高まっています。こうした変化は、社会課題の解決とお客さまへの価値提供を両立する大きな機会でもあります。当社は電動化に加え、水素やハイブリッド技術なども含めた全方位での開発を進め、それぞれのお客さまに最適な選択肢を提供していきます。
またサーキュラーエコノミーへの取り組みも重要です。リマン事業は、お客さまへの価値提供に加え、限りある資源を有効活用する循環型ビジネスとしての側面も持っています。さらに、林業機械事業にも大きな可能性があります。伐採、植林、育林を通して森林資源を循環的に活用する林業は、持続可能な社会の実現に欠かせません。当社は林業機械やデジタルソリューションを通じて、その発展に貢献していきます。
社会課題への対応は、企業としての責任であると同時に、新たな成長機会でもあります。これからも事業を通じて価値を提供し続けることで、持続的な成長につなげていきます。
 
社員参加型社会貢献プログラム「One World One Komatsu」コンテストの授賞式
【ステークホルダーへのメッセージ】現場に学び、変化に挑み続ける
私自身、これまでさまざまな立場で仕事をしてきましたが、振り返ると現在の考え方の原点は、若い頃の経験にあるように思います。経理部門に在籍していた頃は、業務の効率化や原価計算の仕組み改善に取り組むことに面白さを感じていました。新しい仕組みの導入には反対もありましたが、議論を重ねながら改善を進めていきました。その頃から物事の本質を考え、改善を積み重ねる姿勢は変わっていません。また、1998年のアメリカ駐在時には資本市場の縮小により資金調達に苦労した経験もあります。資金確保に奔走するなかで、キャッシュの重要性を実感するとともに、従来のやり方にとらわれず、必要であれば仕組みそのものを見直すことの大切さを学びました。
こうした経験を通じて学んだのは、現場で起きていることを自分の目で確かめることの大切さです。現在もできる限り現場に足を運び、お客さまやパートナー、社員の声を直接聞くようにしています。毎月、取締役会でも前月の業務の時間配分を報告しています。おおよそ4割の時間を社内での執務に、3割をIR活動や工場視察、お客さまとの面談などのステークホルダーとの対話に、そして残り3割は移動時間に充てています。現場にこそ次の改善や成長につながるヒントがあるため、今後もできるだけ多くの時間をかけてさまざまなステークホルダーと会い、直接話を聞く機会を大切にしていきます。
コマツには長年培ってきた総合力があります。商品、技術、サービス、ソリューション、そして世界中の社員やパートナーの力を結集しながら、変化を成長の機会へと変えていきます。今後もすべてのステークホルダーの皆さまの期待に応えられるよう、挑戦を続けていきます。
 
バンコックコマツ株式会社30周年記念式典にて、現地社員との集合写真