変化を力に変え、成長への挑戦を続ける
改善と革新を積み重ね、持続的な成長を実現します
中期経営計画「Driving value with ambition 価値創造への挑戦」(2025~2027年度)では、「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」というありたい姿の実現に向け、「イノベーションによる価値共創」「成長性と収益性の追求」「経営基盤の革新」の3本柱に取り組んでいます。この1年を振り返ると、重点活動として位置付けた各プロジェクトは着実に進捗しています。
「イノベーションによる価値共創」では、技術進化のスピードや競合他社との開発競争は一段と激しくなっており、開発力や迅速な市場投入がこれまで以上に問われています。電動化に向けた技術進化や市場形成の道筋はまだ不透明ですが、多様な動力源への対応などの技術の方向性そのものは変わりません。むしろカーボンニュートラルへの対応に加え、近年のエネルギーコストの上昇などを背景に、お客さまからの期待は更に高まっています。コマツはこうした多様なニーズに対応するため、全方位での開発を進めています。また自動化・遠隔操作化では、Applied Intuition社と鉱山機械のSDV*1化について協業を開始したほか、土木・砕石現場向けのダンプトラック作業の自動化として、グループ会社の株式会社EARTHBRAINと株式会社ティアフォーとの協業を進めています。先進的な技術を持つ外部パートナーとの提携を通じてスピード重視で進めていきます。
また、建設現場ではICT施工への理解も着実に広がっています。当社が2015年から展開してきた「スマートコンストラクション®」は、喫緊の人手不足や安全意識の高まりを背景に、お客さまの現場における活用が着実に進んでいます。コマツは代理店への人材派遣や教育支援を通じて活用を後押ししており、こうした取り組みをグローバルにも展開しています。国や地域ごとの差はあるものの、今後更に広がっていくと見ています。
「成長性と収益性の追求」においては、成長市場への投資と事業拡大に着実に取り組んでいますが、建設・鉱山機械市場の成長率が限定的となるなか、更なる成長に向けた打ち手も求められています。ここで重要となるのが、景気変動の影響を受けやすい新車市場に対して、比較的収益が安定しているアフターマーケット事業です。コマツは、お客さまの機械のライフサイクル全体を通じて価値を提供するソリューションパートナーを目指しており、その手段としてアフターマーケット事業を強化しています。特にリマン事業*2は、お客さまの機械を長期的にサポートするなかで、機械やコンポーネントの劣化状態に関する知見を蓄積し、技術開発やサービス改善につなげることができる重要な事業です。2026年には、北米の需要伸長やグローバルでのリマン製品の供給力の強化を見込み、SRC of Lexington社(アメリカ)のリマン事業を買収しました。
また、地域ごとに競争環境やお客さまのニーズは大きく異なるため、日本から一律に方針を示すのではなく、各地域が主体的に競争軸や成長機会を見極めながら事業を推進していくことが必要です。販売代理店は、地域のお客さまに最も近い立場で、商品、サービス、ソリューションを提供しながらコマツの価値を届ける重要なパートナーです。成長市場の東南アジアでは、昨年、代理店の再編を行い、販売・サービス体制の強化を進めています。
「経営基盤の革新」では、ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)更新プロジェクトをはじめとする重点施策が確実に進捗しています。
*1 Software Defined Vehicle。車両の機能や価値がハードウエアではなく、ソフトウエアによって定義される次世代の車
*2 リマニュファクチャリング事業。長時間稼働した建設・鉱山機械から回収したコンポーネントを新品同様に再生し、お客さまのオーバーホール(分解・点検・修理)のタイミングなどに合わせて、リーズナブルな価格で提供する循環型ビジネス。コマツがキーコンポーネントを自社開発・自社生産している強みを活かしたビジネス
コマツの強みは総合力です。建設・鉱山機械の幅広い商品ラインアップに加え、現場全体の安全性や生産性向上を支援するソリューションを展開し、「モノ」と「コト」の2軸で価値を提供しています。また、キーコンポーネントの内製化を実現する技術力、グローバルに展開する代理店網、なかでもマイニング(鉱山機械)事業では直営の代理店によるきめ細かい販売・サービス体制を通じて、お客さまと長期的な関係を構築しながら継続的に価値を提供するなど、バリューチェーン全体にわたる強みを持っています。またコマツウェイや創業100周年を機に整理した価値観、そしてSLQDC*3の考え方は、これからも守るべきコマツの基盤だと考えています。一方で、変化の激しい時代においては、組織や事業の捉え方を柔軟に変えていく必要があります。実際に私が社長就任以降、明確に見直してきたことが二つあります。
一つは、日米欧を「伝統市場」、その他の地域を「戦略市場」とした従来の市場区分です。これまでは一定の前提のもとで市場を分類してきましたが、いつの間にか固定的な枠組みとなり、地域ごとの実態や競争軸を改めて考える機会が失われてしまう懸念がありました。だからこそ一度枠組みを外し、その時々の市場環境やお客さまの変化を見極めながら、機会とリスクを捉え直していく必要があります。
もう一つは、これまでの機能軸と地域軸に、マイニング、コンストラクション(一般建機)などの「事業軸」の視点を加えて3軸経営としたことです。グローバルでM&Aを重ね多様な事業や商品が加わるなかで、日本の機能本部が中心となる体制では機動性に課題がありました。例えば建設機械・車両事業の売上高の半分を占めるマイニング事業では、2017年のジョイグローバル社買収以降、自社で代理店を保有する直接販売・直接サービス体制を採用しており、コンストラクション事業の独立代理店を通したビジネスモデルとは大きく異なります。そのため、相互の良い点を学び合いながら競争力を高めていくために、「事業軸」の視点を加えました。組織の見た目が大きく変わったわけではありませんが、考え方は確実に変わり始めています。
また、上記2点の見直し以外に開発体制についても考え方を変えつつあります。コマツは長年、自社での開発を強みとして成長してきましたが、技術進化が著しく加速するなかで、自社のリソースだけですべてに対応することは難しくなっています。そのため近年は、キーコンポーネントは自社で開発・生産するという方針は維持しつつも、外部パートナーとの協業を進めながら、開発体制の強化と市場導入までのスピード向上に取り組んでいます。また、地域的には、日米欧を中心とした開発体制に加え、各地域の開発リソースの活用を進めています。実際に現地開発も始まっており、例えばインドでは、初の現地開発モデルとなる小型油圧ショベルの販売が始まるなど成果も出始めています。地域ごとのニーズをより迅速に商品へ反映するとともに、多様な技術や知見を取り入れることで、開発力そのものを高めていきます。
こうした変革を進めるうえで大切にしたいのは、単に組織の形を変えることではなく、本質を考え続けることです。コマツは真面目で実直な企業文化を持つ会社です。TQC(Total Quality Control:総合的品質管理)を原点に、ルールに則って確実に運用・管理する文化を築いてきました。一方で、マニュアルを守ること自体が目的化してしまうと、変化への対応力や機動性は損なわれてしまいます。重要なのは、「なぜこのルールが存在するのか」という本質を考え続けることです。物事の本質を理解し、自ら考えて行動しなければ、急速な変化には対応できません。私は日頃から社員に対し、「旧態依然に陥ることなく、本質を考えて行動してほしい」と伝えています。
変化の激しい時代だからこそ、従来の成功体験や固定観念にとらわれず、考え方そのものを進化させ続けることが重要です。それがコマツの総合力を更に高め、持続的な成長につながると考えています。
*3 Safety(安全衛生・健康)、Law(法令遵守)、Quality(品質)、Delivery(納期)、Cost(コスト)。コマツグループ社員が業務を進めるうえで徹底している意思決定の優先順位
AIの進化がもたらすインパクトは、これまでのIT化やDXとは次元の異なるものだと認識しています。AIは、ビジネスや社会のあり方そのものを変える可能性を持つ一方で、その本質やリスクを正しく理解したうえで活用することが不可欠です。
私は正体のわからないものに振り回されないようにするためにも、まずは自分自身で本質を理解することを大切にしてきました。今回G検定*4を取得したのもその一環です。AIの歴史や構造、ガバナンス、限界やリスクまで幅広く学ぶなかで、生成AIは単なる技術ではなく、ビジネスや社会のあり方そのものを変える可能性を持っているということを改めて実感しました。一方で、AIはあくまで道具であり、最終的な判断は人間が担うべきものであるという認識も強くしました。
そのうえで、コマツはAI時代において大きな競争優位性を有していると考えています。AIの価値を左右するのは、独自のデータと、それを取得するためのハードウエアであり、当社はその両方を有し、かつ社会に広く受け入れられています。例えばコマツは、Komtrax(機械稼働管理システム)、KOM-MICS(工場稼働状況可視化システム)、AHS(Autonomous Haulage System:鉱山向け無人ダンプトラック運行システム)、スマートコンストラクション®などを通じて、長年にわたりICTとデータを活用した価値創出に取り組んできました。これらを通じて蓄積された機械稼働データ、施工データ、現場の知見は、当社の競争力の源泉となる重要な資産です。
さらに、現在開発を進めている建機のSDV化、すなわち機械の機能や価値をソフトウエアによって高めていく取り組みを通じ、機械から取得できるデータの量や種類が一層拡大していきます。AIを活用することで、こうしたデータや現場の知見をこれまで以上に活用できるようになり、品質やサービス、お客さまへの価値提供を更に進化させていきます。
中期経営計画で掲げた「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」というありたい姿を現実の仕事と現場で具体化していくうえで、AIは重要な実行手段です。開発、生産、サービス、バックオフィスも含め、全社で取り組むべきテーマとして、現在はCTOをトップとして、ルール整備と並行しながらAIの導入・活用を加速しています。今後もAIの進化を確実に競争力につなげるため、総力戦で挑戦を続けていきます。
*4 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している、AIやディープラーニングをビジネスで活用するための基礎知識・リテラシーを問う検定試験